祝17周年祭掲示板

(開催期間 2022.09.04.~10.09.)
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滑り込みセーフ? - 饒筆 Site
2022/10/08 (Sat) 11:21:55
 ああああ原画展に行かれた皆さまが羨ましい!
 そしてネムさま、お裾分けの写真をありがとうございます。楽俊は極上の癒しです~「おいら成丁なんだけどなあ」というボヤキが聞こえそうですが(笑)

 確か、今は京都で開催中ですよね……なんとか三連休中に行きたいけれど、行けるかなあ(泣)

 という訳で、お疲れの未生さまに、滑り込み尚陽(未満?)を捧げます。
 京都展の感想も教えてくださいね!(そっちも滑り込みセーフしたい!)

 登場人物   尚隆・陽子
 カップリング ほのぼの尚陽
 作品傾向   殿はいちゃつきたい
 文字数    2066文字
楽しい夜釣り - 饒筆 Site
2022/10/08 (Sat) 11:24:37
※前回の話より、ずっと前の一幕です。陽子さんは若く、二人はまだ付き合っていません。
 なので、尚隆氏を先輩呼びしています。

「楽しい夜釣り」


 秋の空が高いのは昼だけでない。澄みきった夜空に満月が冴えわたる様の、なんと清々しいことか。
 耳の奥を心地よく転がるような虫の音も、少し切なくてなんだか愛しい。そんな秋の夜の風情を愛でながらも、陽子は紅唇を尖らせた。
「……静かですね」
「おう」
 頭の上から返事が聞こえる。
 陽子が居心地悪く身じろぎすれば、釣竿を掴んでいた大きな手が片方離れ、いっそう深く陽子の身を温かな懐の中へ抱き込んだ。
「……」
 何なんだ。何なのだ、この状況は?!
 陽子はジタバタ暴れ出したくなるのをこらえて嘆息する。
 そう、彼女は今、胡坐をかいた隣国の名君の膝に乗せられ、大きな上着の中にしまいこまれているのだ。挙句に、二人羽織のごとく二人で一本の釣竿を持っている。
 ……吹きつけた夜風の冷たさに、思わず「寒い」と零したのがいけなかったか?
 背中を預けてもびくともしない胸板や腰を抱く腕の逞しさ、お尻の下の脚の硬さとか、ほんわりと陽子を包む温もりとか……現在のこの体勢を意識すればするほど、陽子はいたたまれなくなってしまう。正直跳び上がって逃げ出したい。
 が。夜釣りに誘われて、喜んで付いて行くと言ったのは陽子自身だ。
 目的の大物でなくとも、せめて何か釣れるまでは付き合わねば……。
 そうは思うものの、暗い湖面は鏡のように凪いでおり、魚影どころか波ひとつ乱れない。釣り糸も浮きも、最初からピクリとも動かなかった。
「……まったく釣れませんね」
「ああ」
 頭の天辺に熱い息がかかる。陽子は反射的に肩を竦める。
 彼は至極のんびりと静けさを堪能しているというのに、私はどうしてこんなに落ち着けないのだろう。陽子のヘソが次第に曲がってきた。
「なんとか言ってくださいよ」
「なんとか」
「言うと思いました」
 陽子は斜めに顎を上げ、真上に在る呑気な顔を睨みつけた。
「もう!先輩!本当に金色の大ナマズなんか居るんですか?満月の夜だけ釣れる、生き胆が超絶美味の巨大魚なんてっ!」
「いる……はずだがなあ」
 尚隆は陽子の抗議などどこ吹く風で首を捻った。
「声をあげるとこちらを警戒して、ますます出てこなくなるぞ?」
 ぐっ。陽子は言葉に詰まる。でももはや我慢も限界だ。
「暇だし、冷えてきましたし、もう帰りましょうよ」
「なんだ。陽子は帰りたいのか」
 心外だとばかりに、尚隆は陽子のふくれっ面を覗き込む。
「俺は十分楽しいぞ」
「何がたのっ」
 尚隆がいきなり竿を取り上げ、雑に置いた。それから両手で陽子の腰を持って正面に向け、ぬいぐるみのように後ろから抱き締めて紅の頭に顎を乗せる。
「重い!顎が刺さります!もぉ~……何が楽しいんですか!」
 ついに陽子はジタバタ暴れだした。
 すると尚隆は顎は外してくれたが、代わりに左の耳朶に口を寄せた。
「つれない奴だなあ。『月が綺麗だから』陽子を誘ったのに」
 吐息交じりの囁きに、陽子はギクリとして固まった。ギ、ギ、ギ、と軋りそうな動きで上方を振り返る。
「……先輩は、明治の文豪なんか知りませんよね?」
「猫好きの奴なら知っているぞ。ブンコボン?とやらを六太が読んでいた。大笑いしたかと思ったら、鼻水垂らして泣きだしたので吃驚したな」
「えっ?もしかしてそれ、『吾輩は猫である』ですか……泣けますかね、あの話」
「なんでも、あいつにとっては結末が無慈悲極まりないらしい。俺がそこは笑いとばしてやるところじゃないかと言ったら、俺なんかキライだと叫んで飛び出していった」
「ああ……そっか、麒麟にとっては辛い結末かも」
 と、ここで尚隆は茫洋とした表情を捨てニヤリと笑う。
「というわけで、一連の逸話も知っている」
 強い瞳で見据えられ、陽子のこめかみに冷や汗が浮かぶ。
「な」
「せっかくの二人きりだから—―大ナマズも遠慮して出てこないとみえる」
「な、なにを言っているんですか……っ!」
 陽子の頭に血が上った。
 からかっているんだ。絶対。延王は陽子をからかって遊んでいるに違いない!
 怒鳴り返したいのに、口の中がカラカラに乾いて声が出ない。
 仕方なく口を開閉する陽子を面白そうに眺め、尚隆が喉を鳴らして笑った。
「陽子。顔が髪より赤いぞ」(ククク)
 誰のせいですか!!!
 ああ言い返したい。なのに声が出ない。
 ふと精悍な面立ちが寄って来たので、陽子は慌ててそっぽを向いた。
「『月が綺麗』の件を聞いたときはなんて気障で迂遠な奴だと呆れたが、陽子がそんな顔をするのなら悪くないな」
 だから耳元でしゃべるのはやめて!!
 陽子は唾を呑み、必死でわめき返す。
「わ、私は『死んでもいいわ』なんて言いませんからねっ!」
「当たり前だ。斃れてもらっては困る」
「そこだけ素で返事しないでください!……ちょ、放して!!」


 真っ暗な水底から、いくつかの泡が浮き上がる。
 水面に映った月が揺れて乱れ、ぼんやりとお月さま色に光る魚影が現れた。
 それは長い髭を垂らす面をあげ、岸辺の騒ぎを聞きつけて……すいすいと沖へ逃げて行った。


<残念!釣果はボウズです・了>
釣果…? - ネム
2022/10/08 (Sat) 21:42:07
 あー!! 金の大ナマズがぁ~~! 釣果が行ってしまいましたね…って、そもそも尚隆は何を釣りに来たんだろう?? 胃弱の文豪が突っ伏しそうな月夜の太公望たちのお話、ごちそうさまでした(笑)

追記:実はわたくし、あの猫の名作をまだ読んでいません。六太が泣いたラストを教えてください >人<
 原画展、是非いってらっしゃい!
釣果とは - 文茶
2022/10/09 (Sun) 21:13:11
 「つれない奴だなぁ」→「釣れない奴」→釣果(巨大魚&陽子さん)はボウズ!……ということでよろしいでしょうか!?笑 いやいや、陽子さんのほうは食い付きかけてはいますよね!?(好奇心で餌に寄って行ってる感じ??) そのうち釣竿じゃなくて、投げ網で捕らえられそうですねぇ^^;
 それにしても満月の夜だけ釣れる巨大魚、食べたら長生きしそう(王には関係ないけど)。そもそも捕まえられるのか!? もしかして蓬莱と常世を行き来してる!? コイツも実は神なんじゃないか!?……妄想が尽きません(笑)
 楽しいお話をありがとうございました!
コメントをありがとうございます~ - 饒筆 Site
2022/10/09 (Sun) 22:40:12
>ネムさま
 早速、楽しいコメントをありがとうございます!
 おそらく大ナマズ釣りは陽子さんを誘い出す口実(実際に一度釣ったことはある)だと思われるので、陽子さんを抱き込んだ時点で尚隆氏としては成果有りなのでしょう。
 ええ、こんな調子じゃ漱石先生もズッコケますよね~(笑)
 そして例の猫のお話のラストはね、「好奇心は猫を殺す」の展開になってしまうんですよ……私はずいぶんなペシミストだなあと思いました。
 名作って意外と読破していないものですよね。また青空文庫を眺めてみようかなあ。

>文茶さま
 ええ、好奇心やら食い気やらをやたら刺激してくる先輩は、そのうち投網を仕掛けてきそうなので気をつけましょう!
 うちの陽子さんなら、ご馳走を用意すれば一本釣りでも釣り上げられそう(笑)
 そして金色の大ナマズを掘り下げてくださって嬉しいです。良いですね、世界を往来している説……実は棘だらけの怪魚にしようか、虹色マーブルなウナギにしようか悩んでいました……(どんなだ?!)
 こちらこそ、妄想広がる楽しいコメントをありがとうございました!


 
ありがとうございます! - 未生(管理人)
2022/10/09 (Sun) 22:49:21
 饒筆さん、2作目をありがとうございます! 
 初々しい陽子主上が可愛らしいですね~。かの方が明治の文豪を知っているのも面白い。青空文庫読みにってまいりましたよ~。あのお話読んだのかなり昔で全く覚えておりませんでしたので。確かに麒麟には悲しい最後かも。
 痴話げんかをしてる場合じゃなかったですね! 大物を鳥居がしてるし笑。でも、かの方は陽子主上さえいればよいのですよね。うふふ。
 楽しいお話をありがとうございました~。

 大垣書店はご存じとは思いますが阪急京都線「烏丸駅」26番出口直結で行きやすいところです。是非是非行ってみてくださいませ! 私も楽しみにしております。
こちらこそ ありがとうございます! - 饒筆 Site
2022/10/10 (Mon) 21:33:39
>未生さま
 二つ目の花輪も楽しんでいただけて良かった!
 痴話げんかも楽しいイチャイチャのうちですよね~(ふふふ)
 すっかり冷えて帰ったら、温かい汁か茶を二人で仲良くフーフーすればいいんですよ。それで金色ナマズは無事に命拾いです(笑)

 ああ楽しかったお祭りも間もなく閉幕ですね。
 改めまして17周年おめでとうございます。
 そして楽しいお祭りを開催してくださり、ありがとうございました。久々に尚陽が降って来て楽しかったです♪

<追伸>結局、今日も原画展に行けませんでした……(がっくり)
 この目で見たかったです(しくしく)
原画展報告など - ネム
2022/10/02 (Sun) 22:19:41
 先月ひめさんの山田画伯原画展に行きました!記事を読んで、その日のうちに神楽坂へ行ってしまいました(趣味のための行動力ってスゴイ)。
 展示会場へ着いた途端、台風の余波らしい大雨と雷がやって来て、傘を差しても外へ出たくない状況に。お陰で(?)来客が少なく1時間位ゆっくり絵を堪能できました。
 ツィッターに写真を載せたところ、未生さんからこちらに載せてとお誘いを受け、お祭りの賑やかしに投稿させて頂きます。

 さすがに原画は撮影禁止でしたが、唯一山田先生の直筆サイン入り楽俊色紙だけOK。楽俊、やっぱり愛されてるね ^^
Re: 原画展報告など - ネム
2022/10/02 (Sun) 22:24:45
 こちらは東京丸善のポップアップストアにも置いてあった楽俊(8月にこっちも行ってしまいました ^^;)。
 高さは1mより低そうなので実物大ではないと思うけど、ぬいぐるみで出来ていたら、陽子の真似をして抱きついたかも…
Re: 原画展報告など - ネム
2022/10/02 (Sun) 22:32:38
 会場の隣は新潮社で、外壁に大きな泰麒絵があったので雨の中!撮りました。
 原画展に行かれた方達の中には絵師様達もおられて、報告を読むと絵のテクニックについて詳しく書かれていましたので、素人の私が言うこともないのですが、やっぱり印刷されたものより、原画の方が色が柔らかく感じられて、ホッとするような気分でした。
 できれば短編集が出た後に、もう一回くらい開催してほしいですね ^^v
ありがとうございます! - 未生(管理人)
2022/10/02 (Sun) 22:44:03
 ネムさん、管理人のおねだりにお応えくださりありがとうございます~。
 やはり画伯の絵は素敵ですよね! 私は京都展に行く予定でございます。ネムさん・ひめさんのレポートに期待大! 楽しみが増えました~。
ありがたや〜(^人^) - 文茶
2022/10/03 (Mon) 18:25:17
 原画展のレポありがとうございます! 楽俊の可愛らしい姿が見られて嬉しいです。(特に手が本当に可愛い♡ そして山田先生達筆!)
 この大きな泰麒絵がまた圧巻ですね! 十二世界の壮大さが伝わってきます。現地にいたらしげしげと隅々まで眺めて不審者になる自信があります私(笑)
 新刊発売後の展示会をまた期待したいですね〜!
いってらっしゃい! - ネム
2022/10/04 (Tue) 23:06:06
 もっと詳細を言葉で書ければいいのですが、語彙力が無くって、もう「機会があれば是非いってらっしゃい」だけでした(^^ゞ)
 未生さんは京都へ行かれるんですね!気を付けていってらっしゃい。お土産の写真を楽しみにしてます。
 文茶さんはまた機会があれば是非!一緒に不審者になりましょう(笑)
 コメントありがとうございました ^^
いってらっしゃい!(Ⅱ) - ひめ
2022/10/05 (Wed) 19:14:28
ネムさん、こちらをお借りします、ごめんなさい。

未生さん、あの絵(画)たち、あの雰囲気を言葉で表すなんてとても無理です。
京都に行かれたときにたっぷり味わってくださいませ。誠に申し訳ございませぬ
なるほど~ - 未生(管理人)
2022/10/09 (Sun) 22:52:52
ひめさん>
 なるほど、語彙力を奪われてしまう作品群なのですね。私も心して観ることといたします。楽しみだな~。
祭延長のお知らせ - 未生(管理人)
2022/09/30 (Fri) 00:56:56
 みなさま、こんばんは~。

 9月も終わろうというのに北の国の我が街の最高気温は23℃でございました。明日の予想気温は27℃だそう。いやはや……。台風のせいかな。
 台風の被害がこれ以上増えませんように……。

 色々滞っていてごめんなさい。リアルがバタバタしております。帰宅するとぐったり動けない……。
 そんなわけで、今年も延長でございます。取り合えず10月9日まで。
 疲れて萎びている管理人を癒す素敵なご投稿をお待ち申し上げております!
回想ー「昨日の晩御飯」ー梅見 - ひめ
2022/09/21 (Wed) 22:30:29
サイト開設17周年おめでとうございます。

気の利いたものが用意出来ませんでしたので、過去を振り返ってみたいと思います。

管理人さんが2005年8月から始められたお料理ブログで「昨日の晩御飯」がありました。そちらの2006年5月20日に『梅見』という記事がありまして、題名だけ見たワタクシはーー梅見ってどんなお料理なんだろうーーと思ったわけですね。そんな思いを27日の記事の所にコメントさせていただいて………。


梅園に梅の花を見に…………(爆)

見に行って下さい、記事。
強烈な思い出でした。


あ、それから、山田画伯の「十二国記原画展」に行って来ました。小ぢんまりとしたスペースでしたが、偲芳歌のゆったりとした歌声が流れる中、懐かしい挿し絵の数々に会う事ができました。


今後の益々のご発展をお祈り致しております。
いらっしゃいませ! - 未生(管理人)
2022/09/23 (Fri) 23:40:00
 ひめさん、こちらではお久しぶりでございます。管理人のおねだりにお応えくださりありがとうございます~。レスが遅れてしまってごめんなさいね。平日はへばっていることが多くなってしまいまして……。

 おお、懐かしいお話を! さすが拙宅開設当初からいらしている御方ですね~。料理ブログ、見てまいりました。 ――笑。梅見ってどんな料理!? うん、単なるお花見でございました笑。
 27日の記事を見たつもりで28日の散文のコメントを読み、ちょっぴり照れてしまいました。いいお話なんですけど。うふふ。

 原画展のご感想もありがとうございます。ひめさんに届け~! とばかりにTwitterでRTしましたので大変嬉しく思います!

 これからもよろしくお願いいたしますね。
ご無沙汰です! - ネム
2022/09/24 (Sat) 12:37:08
 ひめさん、変わらずお元気そうでうれしいです^^
 原画展行かれたんですね。私は今この時、外の大雨とコロナ情報を見ながら己が去就に悩んでます。以前青山で開催された原画展が素晴らしかったから今回も行きたいけど…またレポなどお願いします。
 料理ブログ、私も大好きです。久々に見に行きましたが…ごちそうさまでした(笑) 今度は「梅見」のお題で何か書けるといいですね。
 また楽しいコメント、ありがとうございました!
お二人とも - ひめ
2022/09/25 (Sun) 00:15:11
管理人さん、ネムさんも、28日のコメント見られたのですね。


いやぁ…………照れますなぁ(汗)
お腹すいてきました(笑) - 文茶
2022/09/25 (Sun) 20:10:25
 ひめさま、お久しぶりです!
 料理ブログ、お邪魔してきました。梅見。ひめさまの可愛らしい勘違いと相まって、じっと字面を見てるとなんだかさっぱりした美味しそうな料理に見えてきました。「梅貝」に見えなくもない。食べたい(何を!?笑)
 28日のコメントも読ませていただきました。呼び方に愛がこもってますね。ほんわかしました。素敵だなぁ〜( ´ ▽ ` *)

 原画展のお話もありがとうございます! 行けない者としては、皆さまからのレポがとても有り難いです。私は先日、地元の本屋に画集を買いに行ったのですが見当たらず、店員さんに尋ねると予約分しか入荷していないとのことで、おいぃぃ〜と胸の中でツッコんで帰ってきました。ガイドブックは並べられていたのに……田舎あるあるでございます。

 あと、こちらでの感想で失礼しますが、28日の未生さまの文章も素敵でした! 切なさと苛立ち、そして愛しさが混じりあって胸が締め付けられました〜(;o;)

 ひめさま、未生さま、楽しい&素敵なお話をありがとうございました!
文章あってこそ - ひめ
2022/09/28 (Wed) 00:06:27
文茶さん、画集残念でしたね。

28日のコメントは管理人さんの文章があってからこそですよ。
それにしても、………照れますなぁ
遅くなってすみません! - 饒筆 Site
2022/09/29 (Thu) 01:16:12
ひめさま、お久しぶりです!またお目にかかれて嬉しいです~!!
なのにコメントが大変遅くなって申し訳ありませんっ(スライディング土下座)

「梅見」という料理……確かに「月見=玉子トッピング」なので、紅いものを乗せると梅見になったりして?……明太子とか?(笑)
当地人は紅ショウガ好きが多いので、紅ショウガをそれっぽく盛ってもいいかもしれません。(私も好きです♪)

そして件の28日コメント、私も読んでまいりました。
きゃー素敵ですね!ラブラブだあ~夜中に胸がホッコリ温まりました。良い夢が見れそうです。ありがとうございます。
ちなみに、私の友人にはパートナーを「相方」と呼称する強者がいます。ええ、彼女はツワモノです(笑)

みなさま末永くお幸せに(はぁと)
紅しょうが - ひめ
2022/09/29 (Thu) 22:34:09
饒筆さん

梅見―月見―玉子―紅しょうが………フムフム(妙に納得・笑)

うわ~、読んで下さって!件の28日。……「相方」なんですか!?

身悶えして、照れてれですぅ(滝汗)
ありがとうございます! - 未生(管理人)
2022/10/02 (Sun) 22:50:46
文茶さん>
 大変遅くなりましたが、散文のご感想をありがとうございます! 随分の前のものですが、ご覧いただき一言までいただけるとは幸せです~。
 息をするように書いていた頃、懐かしゅうございます。日常生活に気力体力を使い切る毎日をなんとかしたい……。体を鍛えるしかないですかね~。

饒筆さん>
 「相方」も素敵な表現でございますね! 
駆け込み - ネム
2022/09/18 (Sun) 21:55:34
 大変遅くなりましたが、祝いの品を献上しに参りました(ゼイゼイ)
 最初シリアスを目指していたのが完全に煮詰まり、思い切って舵を切りました。切り過ぎたかも…(全ウルト〇マン総選挙なんか見たのがイケナかったのか)
 とにかく元気いっぱいの尚隆達を見てくださいね!

登場人物:尚隆 六太 玄英宮の皆さん
作品傾向:特撮…
文字数 :2336文字
Re: 駆け込み - ネム
2022/09/18 (Sun) 21:59:58
― 日 常 ―


「四面楚歌か。久しぶりだな」
 ぐるりと見回すと、廊下に院子に、開け放たれた幾多の扉の向こうにまで、人が溢れている。武器こそ持っていないが、みな王を逃がすまいと、目が爛々と燃え滾っていた。如何に常世一の剣豪と謳われる彼でも、この人の檻を突破できるのか。
「面白い。やってやろうじゃないか」


 事の起こりは今朝。外殿の扉の前で延台輔・六太が言った。
「俺もーやだ。朝議には出ない」
 宣言するが早いか転変し、元来た道を逆走。内殿の院子に出た途端、宙へ駆け上がった。
 このふた月の間、天官長・帷湍の命により玄英宮は厳戒態勢を敷いていた。曰く『王と台輔を出奔させず、朝議に皆勤させよ』と。古今東西、他国の宮城では決してあり得ぬ布令を、玄英宮では下官から冢宰まで今日まで堅守していたが、ついに一角が切り崩されようとしている。
 当然配備されていた空行師一団が駆け付け、小柄な麒麟の行く手を遮るべく空一面に展開する。しかし、そこからの動きが鈍かった。やはり相手は自国の宰相―しかも神獣の姿をしているので、手が出しにくい。地上からは苛立つ王の声が聞こえる。
「何を手間取っている!もうよい、俺が何とかする!」
 数人が駆け出す姿を見下ろしていた麒麟は、上を諦めたらしく一気に降下し、凌雲山の峰々の間で空行師と追っかけっこを始めた。
 燕朝の人々が暫し林立する峰や宮殿の高楼を舞台にした曲芸に見とれていると、どこからか「騶虞が!」という叫び声が聞こえた。それと同時に、一匹の騶虞が流星のごとく麒麟に向かっていくのが見えた。
 慌てて槍や弓を番える空行師を旋風が掠め、武器が薙ぎ払われた。
「妖魔だ!!」
 しかし人々の恐怖の叫びに頓着せず、麒麟は騶虞の上で転変を解き、
「お疲れさまー」
 と空行師に手を振って、妖魔=使令と一緒に雲海の中へ飛び込んだ。


 一方、外殿の外も騒ぎが起こっていた。司馬の厩舎に突然、王が乗り込んだのだ。
「宰輔が逃げた!たまは居るか!」
 王の剣幕に厩番達は慌てて“たま”のいる厩舎へ走り寄ったが、そこで皆立ち止まった。
― 台輔がいつも騎乗していたのは“とら”じゃなかったっけ? ―
 しかし既に時遅し。彼らの背後で疾風が起こり、振り向いた時には開け放たれた扉の向こうに騶虞の飛び立つ姿が小さく見えるだけだった。
「よし、追うぞ!たまを出せ」
 王の勇ましい掛け声が響いたが、さすがにもう通用しなかった。周囲の疑惑に満ちた視線を一身に浴び、延王・尚隆は肩をすくめた。
「では俺も行くぞ」
 そう言うと、どこかの怪盗よろしく豪華な袞を派手に脱ぎ捨て、一目散に走り出す。士卒は六太の方に気を取られ、まだ尚隆の周辺には然程の数はいなかった。これなら逃げ切れると思っていたところ、目の前にわらわらと天官達が現れ行く手を阻む。
「主上、お戻りください!」
「今なら太宰からのお叱りも僅かで済みます」
 尚隆がわざとらしく溜息を吐いた。
「玉体に手を掛けるのか?姿は見えぬが俺の側には使令もいるぞ」
 しかし、日ごろ帷湍に鍛えられている彼らが引くことはない。悲壮な顔をしつつ一礼すると、
「「天官アターーーック!!!」」
 と、叫んだかどうかはともかく、数人がまとまって尚隆へ飛び掛かった。
「天官すごいな」
 傍らで王と天官の闘争を覗き見していた他の官吏達が呟くと、後方にいた天官が鬼の面相で振り返る。
「お前ら他人事のように言うが、今日の天官府の朝議に王が出席されないということは、明日の地官、明後日の春官にも出られないってことだぞ!」
 官吏達に緊張が走る。そして天官の集団から尚隆が抜け出すや否や、地官達が一斉に襲い掛かった。
 地官スライディング、春官トリプルサンダ―、夏官クラッシュ、秋官サイクロン、冬官スノーファイヤーと、官吏達が次々と繰り出さす技を掻いくぐり(適当に想像してください)、何故かうれしそうに『さすが我が官吏達』と呟きながら尚隆は広大な園林へ駆け込んだ。


 園林の奥は生い茂る草木に覆われていた。ようやく着手された王宮内部の整備も、ここまでは手が伸びていない。
 藪の切れる辺りに小高い岩山が築いてあった。以前は頂きに四阿が建てられていたらしく、岩を刻んだ階段が山を取り巻き虚空へと伸びている。岩山の外側は絶壁で、手摺が朽ちていなかった当時でも、余程のもの好きでなければ上る者はいなかっただろう。
 今、尚隆は摩耗した石段を一人で上っている。岩山の上には六太が使令に用意させた荷物が置いてある。尚隆に付けた使令は全て後方で官吏達を巻いている最中だから、尚隆が自力で取りに行かねばならないが
― これから霄山へ行くことを思えば似たようなものだ ―
 そう思った時、小石の転がる音がした。そして尚隆の足は空を踏む。
 気が付くと両手は突き出た岩を掴み、足も辛うじて残りの段に残っていた。しかし残りの石段も崩れる可能性がある。場所は丁度断崖側、迂闊に動くのは危険だ。
― こちらの騒ぎに紛れて六太の使令がたまの柵の鍵を外しているはずだが ―
 しかし視界に入るのは悠々たる空と嶮山、それらを巡る雲と鳥の姿だけ。
― これは、朱衡あたりが気付いて、また鍵を掛けられたかな ―
 どこからか人の声が聞こえる。崖に張り付いた王の姿を見つけたのか。このまま空行師に助けられ、帷湍達の前に引き出されるかと思うと、情なくも笑いが込み上げてくる。
― 今年はお前達の恨みごとを聞いてやれぬかもな ―
 そう思った時、何故か気持ちが足元の谷間に落ちていくように感じた。

 宮城を出て街を歩き、雁が豊かになっていく様を見る。それは六太と同じく、尚隆にとっても喜ばしく心が安らぐことだった。だが、光に向かって進む度に、後ろの影が伸びていく。自分が置いてきたもの、切り捨てていったものの重さが、時折尚隆に後ろを振り向かせる。
― 愚痴を聞いてもらいたいのは、俺の ―

 風を切る音がした。美しく光るものが、こちらに向かって飛んでくる。
「たま!」
 尚隆の声にたまがうれしそうに咆哮を上げる。ぐんぐん近づいてくる騶虞に向かって、尚隆は脆い石段を思い切り蹴った。



「せっかく私が鍵を掛け直させたというのに」
 そう言いながらも朱衡は笑っている。足元には斧を手にした帷湍が精魂尽きたように座り込んでいる。
 王が断崖絶壁にしがみ付いている、という報を聞いた途端、帷湍は厩舎へ駆け込み、たまの居る柵を叩き壊した。台輔を追っている空行師を戻すより、騶虞を向かわせた方が早いと即断した結果だ。
「ひとつ貸しですよ。成笙には黙っていてあげますから」
 次の瞬間、帷湍は厩舎の外に飛び出し叫んだ。
「騶虞を追え!あいつらを逃がすな!!」
 朱衡は珍しく声をたてて笑った。王と台輔もどこかの空で笑っているだろうか。
玄英宮に日常が戻ってきた。

愛、ですね - 饒筆 Site
2022/09/19 (Mon) 21:23:56
ネムさま、こちらではお久しぶりです~。
延主従と玄英宮官吏の皆さまのワチャワチャ追いかけっこ、当事者が真剣であればあるほど(観客側は)ひたすら楽しいですね!
そして帷湍がたまの柵を叩き壊すところでは彼の深い「愛」を感じました(笑)
三官吏の皆さん、何だかんだ言って尚隆氏に完全に絆されてしまっていますもんね~(クスクス)

筋肉ムッキムキの夏官クラッシュ、あるいは人間国宝並みの技&仕込みがありそうな冬官スノーファイヤを浴びて撃沈したい饒筆でございました。
台風に翻弄された三連休に、心躍るお話をありがとうございます!
ありがとうございます! - 未生(管理人)
2022/09/19 (Mon) 22:56:03
 ネムさん、いらっしゃいませ~。管理人のリクエストにお応えくださりありがとうございました!
 壮大な追いかけっこですね! しかもとんずらこいたと見せかけて六太もちゃんと協力してるし。帷湍には気の毒ですが、見ているこちらは大満足のかの方勝利! 
 楽しいお話をありがとうございました~。

 饒筆さん、先レスありがとうございました!
ガチ追いかけっこ! - 文茶
2022/09/21 (Wed) 18:45:33
 冒頭から私の脳内ではスターターピストルの音が鳴り、【天国と地獄】が響き渡り、障害物競走が始まりました(笑) スポーツの秋ですなぁ(違)
 官吏達は攻撃を掻いくぐる尚隆に触れることすら出来ずほぞを噛んでるでしょうね。玄英宮官吏一同の苦労が偲ばれます^^; 六太じゃないけど「お疲れお疲れ」と肩を叩きたくなりますね〜。私としては袞を派手に脱ぎ捨てた姿を「主上素敵っす!」と柱の陰から見ていたいです!(後ろから飛んでくる拳骨)
 そして最後に、帷湍は尚隆の危機と同時に気持ちも救ったのだなぁとじーんときました。饒筆さまもおっしゃる通り、愛されてますね〜^^

 玄英宮での愉快な一幕、楽しませていただきました!!
ありがとうございます! - ネム
2022/09/24 (Sat) 12:10:46
饒筆さん> そう、やっぱり“愛”なんです(爆)私の中で帷湍は一番怒って一番心配してくれるオカン的な位置になってきてますね(笑)。
 技も想像して下さってありがとうございます。ガイドブックで小野先生が「カタカナ使えない~」と言っていたので、反動で使いまくり楽しかったです(先生ゴメンなさい)

未生さん> 妙なドタバタ劇になりましたが、満足と言って頂いてホッとしています。さり気なく「玄英宮を舞台に壮大な鬼ごっこ」と書いてあるけど、実際書こうとすると想像できない…実は戦略家としての二人はスゴかった、と尊敬しました(笑) 

文茶さん> 音楽ありがとうございます!多分この二人、帰ってきてから官吏の運動会やりますね(技の再現!笑) 脱ぎ捨てた袞はきちんとお片付けして、後で渡そうとするとサインをくれるかも…
 何やかや言っても結局二人とも人が好きなんでしょうね。だから玄英宮の人達も二人が好きなのかなぁ、なんて思ってます。

 またもや遅くなり、すみませんでした。年々遅筆に拍車が掛かってきていますが、やっぱりお祭りがあるとスイッチが入ります。あらためてこうした機会を作って下さる未生さんに御礼申し上げます ^^
17周年おめでとうございます - 饒筆 Site
2022/09/07 (Wed) 21:03:38
 未生さま、17周年おめでとうございます!
 すっかりご無沙汰して申し訳ありません。饒筆です。お久しぶりですうぅぅ~!
 遅くなりましたが、お祝いの花輪ならぬ一献を持参しました。

 原作30周年の記念ガイドブック、長年日照りに喘いでいたファンにとってはたまりませんね♪
 私は特に、萩尾先生の「阿選は自分の孤独とだけ付き合い、自分の闇を見つめられなくて、自分は変わらず世界を変えようとした」という分析や、芥見下々先生の陽子絵が刺さりました。ああ陽子なら特級呪霊もバッサバッサ斬ってくれそう……!

 また特別収録の外伝『漂舶』が殊の外楽しかったので、その後というか、その場に六太でなく陽子が訪ねた場合どうなるかな~と思って書いてみました。
 拙宅の尚隆は真夏の太陽とそれが作る真っ黒な影が意識的に同居する御仁ですが、楽しんでいただければ幸いです~。

登場人物   尚隆・陽子
カップリング かる~く尚陽
作品傾向   ほのぼの?シリアス?
文字数    2380文字
漂舶の果て - 饒筆 Site
2022/09/07 (Wed) 21:06:58

 大小さまざまな岩が重なるばかりの台地を、夜半の月が照らしている。
 当地の名は「霄山」。なんと、かつては霄(おおぞら)の名の通り凌雲山であったと伝わるが、今はすっかり崩れ果ててその面影など無い。やけに広いだけの、荒れ果てた岩場である。
 班渠に跨る陽子はその上空をゆっくりと旋回し、やがて目当ての人物を見つけた。
 ひときわ大きな岩の天辺にただ一人、愛騎を背にして座り込んだ彼は、夜風と侘しさをアテに月見酒を嗜んでいた。
—―邪魔をするべきじゃ、ないかもしれない……。
 陽子は逡巡する。
 この地に纏わる曰くについては昨日、碧霄の街の観光案内人がまさに立て板に水のごとく語ってくれた。延王が快刀乱麻を断つごとく反乱を鎮圧する、勧善懲悪の講談も人気だった。が、本人はそのことについて一言も触れなかったし、耳にしたこれらの話が必ずしも真実の全てではないことくらい、陽子にもわかる。
 たまたま二人同時に予定が空いた日程が今で、この時期には必ず行きたい場所があるからと言われて付いて来たのが此処で、正直、陽子には何の関係も無い件なのだから本来は首を突っ込むべきではないのだろうが……それでも同じ立場に立つ者として、どうしても尋ねたいことがある。しかも彼のことだから今聞かないと。明朝にははぐらかされそうな気がする。
 結局、班渠にその場を二周してもらった後、陽子は意を決して彼の元へ下りた。


 大岩に寄る。たまが顔をあげる。
「尚隆ごめん……お邪魔していい?」
 陽子が声をかけると、
「ああ。構わん」
 彼は酒瓶を持ったまま、鷹揚に振り返った。夜の闇より暗い髪が広い肩にかかる。
「なんだ、起こしてしまったか。よく眠っていたから、そっと出かけたつもりだったが」
 悪びれもせずに置いてけぼりを食らわす彼に、陽子は少しヘソを曲げた。
「夜中に褥を抜け出すから、逆に何事かと思ったじゃないか」
「なんだ、浮気でも疑ったか」
「かなり本気で」
 陽子がかるく睨めば、彼は大袈裟に肩を竦める。
「ひどいな。俺はそこまでだらしない男ではないぞ」
「どうだか」
 陽子はツンとそっぽを向き、彼は喉を鳴らして笑った。
 それから彼は素焼きの杯に手酌で濁り酒を注ぎ、陽子へ勧めたが、陽子は首を振って断ったので自ら呷った。
 陽子は彼が最後の雫を啜る音を待った後、おもむろに問いかけた。
「ねえ尚隆。此処で……誰かを偲んでいたの?」
 陽子は腹芸が苦手だし、彼にそれが通じるとは思えない。だからいつも単刀直入に尋ねてしまう。
「この地には大逆を犯した者が葬られたんだってね。私も……思いを残した人や少なくとも自分で手を下した者の墓には自ら手を合わすべきだと思う。でも、ここまで時が経って尚、定期的に訪れたいとは……今は思わない。
 それではダメだろうか尚隆。こうして振り返ることは、王として在るために必要なことなのだろうか」
 陽子はいつの間にか尚隆に向かって正座していた。
「教えて欲しい」
 きわめて真剣な表情。真摯な目つき。ぴんと伸びた背筋。
 ふ、と彼は口元を綻ばせる。そして彼はいつも、どこか面白がっているような、それでいて実の内心など欠片も覗かせない眼差しで陽子を受け止めてくれるのだ。
「陽子は真面目だな」
 そう言って彼は杯を置き、大きな手で陽子の頭をあやすように撫でた。
 撫でながら、ぽつりと答える。
「……偲ぶというより、会いに来ている」
 射干玉の瞳は再び、冴えた月光に暴かれるかつて山だった残骸に吸い寄せられる。
「世間では俺はうまくやっていると言われるが、そんなことはない。何か起きる度になんとか首の皮一枚を繋いできただけだ。なあ陽子よ、失敗から学ぶことは多いぞ。己の失敗はもちろん、敗れた者や道を間違えた者の敗因を探り、その意図や胸中を察することで、何をするべきで何をするべきでないかがわかる。
だから此処に来るのは鎮魂のためだけではない。むしろ自戒と……本気で奴と話がしたいと思って来ている。恨み言でいい。ぜひ聞きたい」
「なるほど」
「ただ、残念ながら会えた試しがない」
「……そうだろうね」
 陽子も彼の視線を追い、乾ききった岩場を見渡した。
 墓の在り処も、動くものも、生命の息吹も何も感じられない。冷たい無機物ばかりが転がる不毛の台地だ。稀代の名君の下でこれほど栄える延にも、まだこんな土地があるのだ。確かに自戒や内省に向いたところかもしれない。
「勉強になったよ」
 陽子は立ち上がり、膝を払った。
「そういうことなら、長居しない方がいいね。私は戻る。尚隆、気が済んだらまっすぐ帰って来て」
「ああ」
「必ず、まっすぐだよ!」
「ハイハイ」
 彼は気楽に安請け合いした後、胡乱な顔で睨み据える陽子を手で招いた。
 何だと半身を傾ければ、強引に引き寄せられて唇が重なる。
「朝目が覚める頃には抱き締めてやるから、布団の中でぬくぬく待っておけ」
 片目を瞑る彼に、陽子は噛みつくように念を押す。
「……朝になっても居なかったらタダじゃおかない」
「それはそれで楽しみだ」
 彼はどこまでも人を食って笑う。そんな彼にもう一度キスを落としてから、陽子は颯爽と班渠に乗り、宿へ帰った。


 紅の髪を翻す若き女王が街へまっすぐ飛び去るのを見送り、尚隆は独りの酒宴を再開した。まろやかな酒を喉へ流し込み、薄ら笑いを浮かべて両目を閉じる。
 そして闇へ語りかける。
「なあ斡由。天は無慈悲だな。懸命に生きたのに選ばれなかったおまえも、此処なら静かに眠れるだろうと思ったのに、墓を山ごと崩すとは。そこまで憎むこともないだろうに……ああ俺だって、いつ手のひらを返されるかわかったもんじゃない」
 ふう……長い嘆息が漏れる。
「試されて抗って、生きて生きて生き延びて—―それで結局、俺が最期に見るのはこの景色なのだろう」
 ぱっと開いた彼の眼に映るのは、何もかもが死に絶えた凌雲山の残骸だ。
「俺たちは終着点までお揃いだ。笑えるな斡由」


<了>
ありがとうございます! - 未生(管理人)
2022/09/09 (Fri) 00:11:34
 饒筆さん、いらっしゃいませ~。またお会いできて嬉しいです! 
 17周年を寿いでくださりありがとうございます。最近はほとんど更新できていないのですが、細く長く続けられればとは想っております。

 おお、饒筆さんは「漂舶」未読だったのですね。今回意外と未読の方が多いと知って驚きました。そういえば、私がCDブックを買ったのはサイト開く前だったなあ、と……。

 「漂舶」を読むと「東西」の見方が変わるよな~と思います。斡由と月見酒を飲むかの方……見つめる陽子主上まで目に浮かぶ心地がいたしました。
 素敵な尚陽をありがとうございました!
寄り道禁止〜! - 文茶
2022/09/10 (Sat) 20:29:26
 饒筆さま、お久しぶりです!
 危ういバランスで光と闇を行き来する尚隆にハラハラしたり、ほっとしたり、青くなったり。
「必ず、まっすぐだよ!」という陽子さんの台詞から、「ちゃんと帰って来て! 闇に引きずられないで!」という切なる思いを感じました。陽子さん、頼むからしっかり手綱を握っていてくれと願わずにいられません(これはお互いに言えることかな)。

 シリアスの中にもほのぼのあり、甘さありの素敵なお話、楽しく拝読いたしました。ありがとうございます!
待つのはぬくぬく - ネム
2022/09/18 (Sun) 22:40:35
 饒筆さん、お久しぶりです。またお祭でお会いできてうれしいです!
 饒筆さんの尚陽はこの絶妙な距離感にいつもときめきます。王と王として、恋人同士として、そして彼らの内の王と人として。時には危うく、時には毅然として。
 無理に尚隆の心内に踏み込まず、でも真剣に向かい合う陽子の可愛さと勇気に、尚隆ならずとも惚れますね。冷えた月夜の宴の後には、ぬくぬく寝床でのんびりしてね!
 素敵な作品を読ませて頂き、ありがとうございました。」
嬉しいコメントをありがとうございます~ - 饒筆 Site
2022/10/02 (Sun) 18:47:25
>未生さま
 こちらこそ、お祭りを開催してくださり、また久方ぶりにお話しできて嬉しいです!
 私もこのところ低浮上すぎて心苦しいのですが、なにしろ原作が30周年ですから、ファンの一人として細々と愛を叫び続けたいと思います~。

 さて、そうなんです。「漂舶」の存在は知っていたのですが、今回やっと読むことができまして、めっちゃ嬉しかったんです♪
 確かに「東西」の味わいがガラッと変わりますね。深みがグッと増します。まるでラーメンの味変レベル……
 十二国記の醍醐味は、こういう、視点を変えると物語の意味がガラッと変わるところにありますよねえ。実に面白い……!
 楽しんでいただけて良かったです♪

>文茶さま
 お久しぶりです~!お目にかかれて嬉しいです!
 尚陽の場合、「まっすぐ帰って来てよ(来いよ)」はホントお互い様ですよね~尚隆氏は根無し草だし、陽子さんも鉄砲玉だし(笑)
 手綱を握って、のお言葉で、お互いの首にかけた手綱を綱引きのごとく引っ張り合っている二人が思い浮かびました。イチャイチャ……しているんやろうか、それ……?(あはは)
 妄想捗るコメントをありがとうございました♪

>ネムさま
 こちらこそお久しぶりですみません。温かなコメントをありがとうございます!
 私の個人的な妄想ですが、尚陽が本格的にお付き合いするのは陽子さんが二つめの山を越えて立派な一柱の王となってからかなあ~と思うので、確かにうちの尚陽はオトナの距離感を保てるのかもしれません。
 そして、たぶん、オフトゥンの中でぬくぬく&うとうと待っていた陽子さんの隣に滑り込んだ尚隆氏は、その手足のあまりの冷たさに目が覚めちゃった陽子さんに「冷たいよ、もうッ!」って怒られると思います(笑)
 秋冬あるあるですね~♪
 また遊びに伺いますねっ。
9/4拍手御礼 - 未生(管理人)
2022/09/06 (Tue) 00:59:09
 9/5の最低気温は18.7℃、22.1℃でございました。南の風強く、最大瞬間風速は20m。小雨なのに傘がさせない状態でございました。台風、まだ遠いのになかなかの威力……。皆さまどうぞお気をつけくださいませ。

 拍手をありがとうございます。それでは御礼でございます。

Sさま>
 17周年を寿いでくださりありがとうございます。ご投稿はのんびりお待ち申し上げておりますね!

 皆さまの素敵な十二作品をお待ちしておりますね~。
改めまして - 文茶
2022/09/04 (Sun) 22:16:36
 17周年おめでとうございます!

 お祝いのお話をお聞きしたときに、尚陽(シリアス&甘め)のリクエストをいただき喜んでお受けしたのですが、最近私の中で夫婦漫才づいて糖度低めになっている二人。引き戻すためにいろんなラブソングを聴いていたら、良い雰囲気になってくれました(笑)
 ちゃんとリクエストにお応えできているのかあやしいところではありますが、どうぞご笑納くださいませ〜。

登場人物  尚隆・陽子
作品傾向  シリアス
タイトル  「抱擁」
ありがとうございます! - 未生(管理人)
2022/09/05 (Mon) 01:08:24
 文茶さん、いらっしゃいませ~。早速のご投稿をありがとうございます! 
 キャー! 素敵です! 素晴らしい尚陽をありがとうございました~。
 どんなラブソングを聴かれたのか気になるところ……。
大人だ! - ネム
2022/09/07 (Wed) 23:14:34
 こちらではお久しぶりです!またご一緒できてうれしいです。
 ふあぁぁ~~ 突端から大人な雰囲気~。陽子が凛とした大人の女性で溜息です。BMを私も知りたいです。
 衣装もですが髪飾りが素敵ですね。尚隆のプレゼントかなぁ。いろいろ妄想してしまいます。
 今年もステキなイラストを拝ませて頂きました -人ー
どきどき - 饒筆 Site
2022/09/08 (Thu) 00:25:49
お久しぶりです、文茶さま!
なんて綺麗な色合い、そして衣装も凝っていてお洒落ですね~!
二人きりで避暑中の一幕でしょうか。うっとり。

二人の手がお腹あたりにあるので、思わず「え?おめでた?」と邪推したおばかな饒筆をお許しください……
きっと愛が溢れてどうしようもなかったのね。
素敵で幸せな眼福をありがとうございます。
コメントありがとうございます! - 文茶
2022/09/10 (Sat) 20:36:30
>未生さま
 ラブソングは鉄板のゴスペラーズを中心に洋邦問わずR&Bを聴きまくりました。糖度よ戻れと念じながら(笑) あと、懐かしのシティポップや昔のアニメの主題歌(割と歌詞が直球でダイレクトに刺さる)とかも聴きましたね〜♪
 実はこの構図のほかに壁ドン(古;;)も候補に上がっていたのですが、いかんせん二人がどう転んでもシリアスになってくれずボツとなりました。またの機会に描こうと思います♡

>ネムさま
 ツイッターではお世話になっております!
 ふふふ、大人な陽子さん、尚隆を包み込む感じですかね〜///(体勢的にはガッツリ掴まれていますが^^;) 描いているときもより女性らしくなったなぁと思っていたので、凛とした雰囲気を感じていただけて嬉しいです。
 装飾品は基本尚隆からの贈り物ですね(断言)。金波宮の側近(代表取締役:祥瓊)からいろいろと情報を仕入れているのかもしれません^^

>饒筆さま
 衣装の細かいところまで見ていただきありがとうございます! 二人のいる場所は深く考えずに描いたのですが、なるほど避暑地。わぁ、さらに妄想が膨らみます〜///
 そして、見える……見えますね、おめでたに! 陽子さんの衣装がゆったりしているのがまた(笑)
いやしかし、胎果同士なので何が起きても不思議ではない!? 生まれたらどちらの国の籍に入るんだろう? 子は王じゃないから神ではなく仙だよね……などと妄想が妄想を呼びあらぬところまで飛んでいきそうです(笑)
祝! 17周年! - 未生(管理人)
2022/09/04 (Sun) 18:30:49
 皆さま大変ご無沙汰しております。

 拙宅「夢幻夜話」は9/1に開設17周年を迎えることができました。皆さまのお蔭でございます。ありがとうございます。

 しかしながら、昨年で原作は30周年。拙宅などまだまだでございますね……。

 さて、ガイドブックも発売され、盛り上がっておりますね。拙宅17周年及び原作30周年を祝い、祭なんぞ開いてみようと思います。掲示板を用意いたしましたので、奮ってご参加くださいませ。皆さまの素敵な作品をお待ち申し上げております。

 投稿の見本として短いものを用意いたしました。お楽しみいただければ幸いでございます。

登場人物   尚隆・六太
作品傾向   シリアス
文字数    530文字
待望の時 - 未生(管理人)
2022/09/04 (Sun) 18:35:02
 戴から使者が来た。泰麒が帰国してからずっと待ちわびていた報せだ。延王尚隆は直ちに延麒六太を呼びにやり、使者の待つ外殿に赴いた。

 剣を携えた使者は深々と平伏する。面を上げさせて促すと、驚くべき奏上を始めた。泰王驍宗が生還し、雁に助力を求めているというのだ。差し出された剣は寒玉。驍宗が前国主から下賜された剣だ。そして結びつけられていたものは。

「――これは、あのときの」

 六太が声を上げる。景王陽子が裏書きした泰麒の旌券だ。泰麒と李斎が慶を出立するときに六太が持たせたものだった。
 使者は厳かに戴の現状を報せる。泰王、泰麒、そして李斎もまた今は消息が知れない。それでも助力を願いたい、と。

「――すぐに戴へ向かおう」

 使者は恭しく伏礼し、休む間も惜しんで戴へと戻っていった。やがて。
「今回はやけに腰が軽いのな」
 ぽつりと六太が呟いた。尚隆は軽く笑って応えを返す。
「泰王からの要請だ、当然だろう」
「生死が分からないのに?」
 僅かに眼を瞠った尚隆は片眉を上げる。

「七年間穴の中で生き延びた奴がいまさら命を落とすと思うか」

 天命ある限り王は死なぬ。

 そう呟いて、尚隆は立ち上がる。自ら戴へと赴くために。六太は当然のようについてくる。背に感じる半身の気配。尚隆は黙して口角を上げるのだった。

2022.09.04

後書き - 未生(管理人)
2022/09/04 (Sun) 18:39:29
 「白銀」関連の書きかけを発掘いたしました。初書きは2020.9.12。昇華して書き始めるまでに1年、寝かせて更に2年が過ぎております。
 原作短編もまだのようなので仕上げてみました。

 管理人の作品もこの程度でございます。皆さまお気軽にご投稿くださいね!
おめでとうございます! - 文茶
2022/09/04 (Sun) 21:50:53
 サイト17周年、おめでとうございます!!
 こんなに長く続けていただけるのは、遅れて二次の世界に入ってきた者として本当に有り難いことです。感謝、感謝です!

 そして「待望の時」。なんでしょう、尚隆のこの絶大なる安心感。この御方が登場すると「よし、大団円だな」と確信してしまう、まさに安心と信頼の雁州国。軽口の裏に隠された驍宗さまへの信頼が窺えて胸が熱くなりました〜!
17周年おめでとうございます! - ネム
2022/09/07 (Wed) 23:08:32
 今だ宿題が片付いておりませんが、放っておくと新学期が終わりそうなので、お祝いを述べさせて頂きます。
 原作が今年30年とのことですが、その半分以上を「夢幻夜話」様は伴走されているのですね。これは本当にスゴイ!ことです。文茶さんがお仰る通り、後から入った人間には目印の灯台のような存在です。これからも雁主従のように末永く続かれるよう祈念しております。
 出だしは白銀ネタ!まさかの登場でしたね、このお二人さん。本来麒麟を伴うことのないはずの戦乱の地へ六太を連れて行く尚隆に、二人の信頼関係が見えて萌えております。未生さんの書く十二国世界をまた堪能させて頂きます m--m
おめでとうございます~ - 饒筆 Site
2022/09/08 (Thu) 00:07:05
改めまして、未生さま、サイト17周年おめでとうございます!
桜祭をきっかけにROMファンから創作者へ一歩踏み出した私にとって、未生さまはまさに道標というか導いてくださる北極星のようだと(一方的に)お慕いしております。
未生さまとも、もちろん小野主上ともこれからも十二国記の世界をご一緒に楽しんでゆきたいと思います~
よろしくお願いいたします。

さて、わあ!延主従はさすがの頼もしさですね!
興っては呆気なく消える王朝を惜しんでいるお二人だけに、泰主従の逞しい頑張りはすごく嬉しかったでしょうね。
ぜひ印籠を出して「控えおろう!」をやっていただきたい……(ネタが古い?)

心躍るお話、そして楽しい場を提供してくださってありがとうございます!